昨今の健康ブームでよく取り上げられる黒酢、スポーツのあとの水分補給に欠かせないスポーツドリンク、美容と健康に良いビタミンCを多く含んだ柑橘類、お酒の中では比較的身体に良いとよく言われるワイン・・・どれも体に良いとされるものばかりですが、歯にとっては、時に大敵です。今回は酸蝕歯について書いてみます。

酸蝕歯とは、その字を見ると酸によって蝕まれた歯のことだとわかります。
具体的には酸性の場所(メッキ工場など酸を扱う職場など)で酸を吸ったり、酸性の食べ物・飲み物を取ることによって、歯が溶けてしまうことです。

酸蝕歯について

むし歯も歯が溶ける病気ですが、むし歯の場合は細菌が原因ですので区別されています。
症状が進行すると知覚過敏やむし歯のような痛みが出ます。
歯は、酸性の食べ物・飲み物、特にpHが5.5以下の飲食物に長時間触れると溶けてしまいます。
コーラなどの炭酸飲料や栄養ドリンク、スポーツドリンク、黒酢、ワイン、ビール、オレンジジュース・野菜ジュースなどの飲み物、レモンやみかん、グレープフルーツなどの柑橘類、ドレッシングやぽん酢、しょうゆなどの調味料なども5.5以下に当てはまります。
多くは身近な食べ物で、なかには健康にも良いとされているものもあり、必要なものなので、その摂り方に注意が必要です。

そのポイントは口の中の酸性状態が長く続かないようにすることです。
まず、だらだら飲みやだらだら食べはできるだけ避けましょう。
さらに、フッ素入りの歯みがき剤などを使用して歯質を強化する、軟らかい歯ブラシを使う、酸性の飲みものときはできるだけストローを使う、などで予防をこころがけましょう。

一見問題ないようで酸蝕にはあまりよくない、ということもあります。
例えば、運動中や運動後にスポーツドリンクを飲むことです。
水分補給としては大切ですが、運動によって口の中が乾いて唾液の量も少なくなっていて、酸がいつまでも留まってしまう恐れがあります。早いタイミングで⽔を飲んで中和するとよいでしょう。
また、飲食物を摂ったあとにすぐに歯を磨くのも良い習慣のように見えます。
しかし、酸性の強い食事だったとしたら、酸によって軟らかくなったエナメル質が唾液で中和されて元に戻るまで30分くらいはかかるので、すぐに歯を磨くとまだ軟らかい状態のエナメル質にダメージを与えかねません。
今摂った食事が酸性が強かったかどうかは、なかなかわからないので、食後の歯みがきはいつも30分以上は置くようにしましょう。

酸蝕は我々の食生活のなかでは避けられませんが、正しい知識を持って予防を心がければ、恐れることはありません。

新大久保歯科医院